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エビの天ぷら

・・・・造形リトミック研究所ブログ・・・・・

このブログでは、造形リトミック教室での日々のふとした出来事や気づきを記述しています。知的障害や発達障害をもつひとりひとりの生徒さんの学びと成長の姿を共有し、親御さんと共に療育についてゆったり楽しく考えていきたいと思います。
※ここでは親御さんの了承をいただいた記述をお伝えしています※

おはようございます。造形リトミック・国立教室の富澤です。

Tさんは、料理や食物について専門に学んだ生徒さんです。専門学校時代には、和食、洋食、中華料理などさまざまな調理実習があったそうです。特に和食の天ぷらの実習が思い出深いとのことです。
その時のことについて話題に取り上げてみました。

エビにていねいに衣をつける。
あわてない。急がない。
ボタッとならないように、エビをそーっと油の中に入れる。
ジュワジュワジュワーとなってくるから、じっと待つ。
油がパチンとはねることもあるので気をつける。
エビをクルクルと動かしすぎない。じっと待つ。
ほんの少し色がついたら、エビを油の中からとりだして、油を切る。
ポタポタ油が切れるまで、じっと待つ。
油に落とさないように気をつける。
衣がとれないように、そっとお皿に乗せる。
いいにおい。
湯気が立って、できたて。
ホカホカ、おいしそう。
さあ、いよいよいただきます。
エビの天ぷらを食べたときの音は・・・サクッ、サクッ、モグモグモグ・・・

「ていねいに」「そーっと」「そっと」という言葉から、美しい所作が目に浮かびます。「あわてない」「急がない」「ほんの少し色がついたら」「じっと待つ」「気をつける」という言葉から、手順に適した注意深い動作やタイミングを見極める専門家の姿が感じられます。

「ボタッ」「ジュワジュワジュワー」「パチン」「ポタポタ」「いいにおい」「ホカホカ」という言葉から、エビが天ぷらになっていく様子、台所でのいろいろな音、漂ういいにおい、できあがりが待ち遠しい気持ちなど様々な情景が広がってくるようです。

「サクッ、サクッ、モグモグモグ・・・」という言葉は、おなかも心も満腹になっていく幸せな音です。

先日から所長室ブログで数回にわたって取り上げている「日常の言語」。伝達の道具や記号だけにとどまらない言語には、「伝えたい」「わかりあいたい」という思いが添えられていて、気持ちを動かすエネルギーがあります。

まさしく言葉は人の間で育つもの、人と人との関わりにおいて育んでいくものです。生徒さん一人一人にある言葉の種、言葉の芽を大切に育んでいきたいと思っています。

http://www.zoukei-rythmique.jp